6月21日:久しぶりにバスに乗った話

普段は主に徒歩、たまに電車、さらにたまに車を移動手段として使っているわたしは、「バス」というものにとんと慣れていない。

バス。タクシーよりは多い、都心の電車よりはずっと少ない数の乗客をお腹の中にしまい込み、ガタゴトと走るそれ。線路に従い走る電車と違い、無数に伸びる道路を自由に走っているようなそれ。けれど走るルートは決まっているので、やっぱり自由ではないそれ。それはバス。

今日は電車では行きにくい、徒歩ではちょっぴり遠い場所に行かなければいけなかったので、ものすごく久しぶりにバスに乗った。「さぁ、バスに乗るぞ」と思って初めて見えてくる停留所。意外と街のあちらこちらにあって、意識しなければわからないものは世の中にごまんとあるのだなと改めて知る。

電車であれば乗り換えアプリですいっと発車時刻を調べるけれど、バスだとなぜか停留所に書かれた時間を確認してしまう。乗り換えアプリにバスの時刻も書いてあるのに、なぜか。そこに書いてある時刻が、唯一正しいもののように思える。

平日、土曜、祝日。曜日ごとにわかれている時刻表。今日は月曜日の、今は15時。ふたつが合わさるところをついつい、と指でなぞりながら探す。発車時刻は、15:16。いまは15:04。あぁ、14:57に行っちゃったのかぁ。仕方ない、座って待とう。

曜日と時刻が頭の中でぐるぐるまわり、やがてポンと目の前に飛び出てきた「15:16」だけを大切に頭の中に刻んで、ベンチに座る。あと12分、あと10分、あと8分。途中でやってきた別の行き先のバスに戸惑いながら、あぁわたしは乗らないのねと納得しながら、あと5分、あと1分。

道路の先からやってくるそれを見つけて、いつか猫バスに会える日も来るかしらとひとりで少しだけ楽しい気持ちになる。いつかを夢見て、今は鉄のかたまりに乗り込む。まぁこれもこれで悪くないと思い直す。

電車の揺れとは違う、バス特有の揺れ。ブロロロロ、と小さな振動。たまにガガ、ガゴン、と大きな揺れ。発車と停車のたびに、グンと後ろに引かれる感覚。

顔の横にある窓の向こうには夜をカケラも寄せ付けない真昼のような明るさがあって、あぁ、もうすぐ夏本番だ、とバスに揺られながら思った。